sasakure.UK New Vocaloid Album
製作者インタビュー
sasakure.UKがササクレイションレーベルとして独立後、リリースする初のアルバム『未来イヴ』。
「トンデモワンダーズ」や「ÅMARA(大未来電脳)」など、メッセージ性の高い楽曲はもちろん、「ファンタズマ」や「空想模倣とノアβ」など、アルバムのために書き下ろした個性的な楽曲も多く収録され、氏の世界観を強く感じさせる独創的なアルバムとなっています。
長年ボーカロイドと向き合いながら楽曲を制作するsasakure.UKと、その作品を彩るクリエイター達にアルバム制作にまつわるお話を伺いました!
Music & Lyrics sasakure.UK
―今回のアルバム全体のコンセプトはどういったものでしょうか。
「未来」です。
未来をテーマにしたアルバムは10年前「トンデモ未来空奏図」というアルバムで一度制作しましたが、時を経てあの時想像していた未来を実際にむかえて、改めてどう感じたのか、2023年現在は未来についてどう考えているのか、を考えながら再びこのテーマで制作することにしました。
楽曲『フューチャー・イヴ』と『ÅMARA(大未来電脳)』が出来た時に今回のアルバムコンセプトや構成が浮かびました。
曲順を、1曲目『フューチャー・イヴ』に、最後の曲を『ÅMARA(大未来電脳)』にしようと決めていて、同じ未来をコンセプトにした楽曲なのに真逆にあるような、聴いているうちに別次元の未来に向かっていってしまうような感覚になるとよいなと思いながら制作を進めていきました。
部屋にひきこもってゲームをプレイするメガネの主人公、ネガ子(と制作中呼んでました笑)のキャラデザインと表情を見たときに、謎の親近感を感じて、たくさん活躍させたいなあと思ったのがきっかけです。
―togaさんにはどのような依頼をされたのでしょうか。
ストーリーの根幹は僕がコンテを描いて、それをもとに膨らませてシーンにはめ込んでいただきました。
主人公のキャラクターデザインやステージなどの背景、ささくれ楽曲小ネタはtogaさんのアイデアです。
いつも僕のファンもよくよく見ないと気づかないような細かい小ネタまで作り込んでくれてうれしいです。
猫がゲームを咥えて走っていく、物語が変わっていく2番の展開がお気に入りです。
―ジャケットイラストは革蝉さんが描かれていますが、どのような依頼をされたのでしょうか。
フューチャー・イヴとはまた違った、化孵化やディカダンスの物語もそこに一緒にいるような、ミステリアスな方向性のイラスト、というコンセプトで依頼しました。
隕石は一つ一つがそれぞれ“あるもの”のメタファーになっているんですが、それを俯瞰で見つめているキャラクターの身体が崩れている、という構図が良いんじゃないかと、革蝉さんと話しながら決めていきました。
タイトルは"未来イヴ"なので、まさしく未来のその前夜、現代または少し近い未来…をイメージしています。未来はまるで未知のようでいて、いつでも自分たちのすぐ近くにいるのだなあと、この10年を思い返しながら実感しています。
―新しく公開された「ポジネガ*ミステイカーズ」はどういった経緯で制作されたのでしょうか。
当初は「ネガポジ*コンティニューズ」のMV化計画が挙がっていて、togaさんとやりとりしていました。制作を進めるうちに新しいアイデアが湧き、これは同じゲームをコンセプトにした新しい曲を作った方が面白いんじゃないか…という結論に至り、曲自体も新しく作ることにしました。
…と言っても、革蝉さんとは打ち合わせと題していつもケーキとか食べながら好きな作品のシチュエーションの話をする方が多いです。(手塚治虫さんの漫画とか…)その方がインスピレーションが浮かんで作品のモチベーションが上がるので、最近では自然に自分が良いなと思ったシーンなどを伝える会になっています。(笑)
―「ポジネガ*ミステイカーズ」の他に、新規楽曲が3曲収録されています。
これらはそれぞれどういった楽曲でしょうか。
A.D.3039のハテナ…フューチャー・イヴのMVで、ミクが映っているビデオが3039年の映像だったので、そこから膨らませて3039年を舞台に1曲作りました。フューチャー・イヴの情報量多めで沢山転調するバンドサウンドに対して、ループが主体のテクノ系トラックをメインに音を加えていきました。
ファンタズマ…例えば鋭い針を持っていたとして、それで刺してしまうのが道化なのか?それともそれを縫い付けてしまうのが道化なのか?なんて事を考えながら制作しました。自分自身、曲を作る時は何かに憑依されるような感覚で曲を作っていますが、この曲はバンドの皆にもそんな憑依感を大切にしながら演奏してもらいました。
NEONEO…前後の曲順を決めて、化孵化とトンデモワンダーズの間に聴きたい曲のイメージで制作しました。
繭のようなファンタジーのような、明るいような寂しいような…、未来の研究所で夕暮れの遊園地を夢見る子どもをイメージしました。
空想模倣とノアβ…Atröpøsやクエスチョンユー100ようなバッキングフレーズやモチーフを、今の僕がアレンジしたらどのような楽曲になるのだろう?と思いながら自由に作っていきました。
これまでの僕の楽曲を聴いてくれる人には楽しんでもらえる要素も沢山ありますが、ラップパートやリズムトラックなど、今までとはまた違った少し新しい世界に連れて行けるような、そんなグルーヴ感を大切にしながら作りました。
―「ファンタズマ」はバンド「有形ランペイジ」のメンバーも収録に参加しています。
こちらはどういった経緯で制作されたのでしょうか。
この楽曲は数年前からほぼ出来ていて、あとは作り込むだけだったのですが、楽曲のメロディが自分の中でどうしても納得するものにならず、ほとんど全部新しいフレーズにリファインして完成させました。
再調整するにあたって有形ランペイジのメンバーの皆にも相談して楽器を生録してもらいました。演奏された音を聴いて、ファンタズマという曲がより曲のもつ世界観・歌詞にふさわしい楽曲になってくれて良かったなあと思っています…!
mamiさんは旧フレーズverでもコーラスを収録していたのですが、新しくするにあたってもう一度ボーカルを収録しなおしました。(mamiさんありがとう…!)
―今回のアルバムは「化孵化」「ÅMARA(大未来電脳)」といった再生数百万回超えの大型楽曲も収録されています。それぞれの楽曲に対してコメントをお願いします。
トンデモワンダーズ…自分の中の転機になった楽曲です。昔正解だなと思ってした行動がよくよく考えたら間違いだったなあと感じたり、昔失敗したなあと思った事が逆に正解だったりする事があって、それが制作の着想になっています。
プロセカ・ワンダショのストーリーと相まって、世界のピンチを救ってくれるような楽曲になりました。
人間万事塞翁が馬だとは思いませんが、おおきな逆境も正解のチャンスだなと思う今日この頃です。
化孵化…今回アルバム収録にあたって、佐々木さんにギターを新しく録ってもらいました。楽曲のアレンジやミックスも新しくして、またサブボーカルとして初音ミクのボーカルも加えて、展開や音色など、僕らしい作品になりました。
革蝉さんと“気持ちが悪い美しさって凄くいいですよね~”という話をしながら制作していった記憶があります。
長年信頼していた人達に裏切られた!と思ったのが制作のきっかけですが、その時の愛と憎しみを表現しています。
ÅMARA(大未来電脳)…このような歌詞やジャンルの楽曲が世に出ることはほとんどないと思うんですが、だからこそそんな世界を見てみたい…という欲求に抗えず、創りました。(ものすごく大変でした)
謎の言葉は、文字の源と言われている“古代フェニキア文字”がモチーフになっています。おおきな時代を経ると未知なるものが多すぎて、過去も未来も似たようなものだなあと感じる瞬間があります。楽曲もそんな未来と過去を行き来するようなサウンドを目指しました。数年前にエジプト旅行に行ったんですが、その時の経験も楽曲に盛り込んでいます。
作中では“アマラ”が誰なのか、存在をぼかしています。そこも含めて聴いてくれたら嬉しいです。
―今回のアルバムのどういったところを聞いてほしいでしょうか。
アルバムを通して聴いた時のバランス感をいつも以上に考えながら作ったので、是非通して聴いてくれたら嬉しいです!
昔から僕の曲をずっと聴いてくれている方にも、プロセカをはじめ新曲やゲームをきっかけに知ってくれた方にも楽しんでもらえるような作品になったと思います。
苦労するのはいつも歌詞とタイトルです。(タイトルに至ってはトラックメイクや編曲よりも時間が掛かってるんじゃないだろうか…)言葉ひとつとってもひらがな、カタカナ、漢字でまったく景色が変わってきます。
それだけ日本語の言葉の奥深さがあるというか…言葉の面白いところですね。
―最後に、聞いてくださる方々にメッセージをお願いします。
いつも僕の曲を聴いてくれて、応援してくれてありがとうございます。
『未来イヴ』はササクレイションレーベル独立後はじめてのアルバムです。沢山聴いてくれたらうれしいです!!
常々自分らしい作品を…と思いながら制作していますが、今回のアルバムはよりその想いが強く、色濃くでた作品になったと思っています。
貴方の、未来の“イヴ”として彩ってくれる1枚になれば幸いです。
NEW
―ファンタズマMV制作中はどのようなやりとりがあったのでしょうか。
一番最初は「主人公より人気が出るような悪役の曲」というスタートでした。そこから「純粋な存在の闇堕ちっていいですね〜」というお話になり、完成したMVのようになりました。
けれど合言葉のように言っていたのは血シャツに関してです。笑
血シャツ最高!
―MVの見どころはどこでしょうか。
「Jokerは誰なのか」、ぜひ最後まで見て頂けると嬉しいです!
―制作中苦労した、大変だったことは何でしょうか。
ラフを描いていくうちに予定の倍の量になってしまい、とにかく描きあげるのが大変でしたね…あとは夏に作業していたのですが、エアコンが壊れて本当に汗を描きながら作業しました。いい思い出です。
―ブックレットでもファンタズマのページにほろさんのイラストが掲載されていますね。完成したアルバムを手にされていかがでしたでしょうか?
尊敬するアーティストの皆さんとご一緒できて、素直に嬉しかったです!
『A.D.3039のハテナ』から繋がり、『化孵化』に続く『ファンタズマ』は、アルバムの中でもsasakure.UKさんの「重み」や「痛み」のようなものを担った曲の1つなのかなと感じました。
私のイラストやMVで、金平糖の中に誰かが混ぜた石粒のような、そういう存在感が表現できていればいいなと思います。
ファンタズマMVイラスト ほろ
Illustration 革蝉
―今回のジャケットイラストはどういった経緯で制作されたのでしょうか。
sasakure.UKさんと数年ぶりにお会いした時にお仕事のお話を頂きました!久々のジャケット制作をやりたいという気持ちと、別件の仕事と同時平行で完成させなければならず、沢山手を動かせばいけるかな…?!という気持ち半分半分で制作をしていました。
―依頼を受けて、どういったイメージでイラストを制作されたのでしょうか。
昨年制作させていただいたsasakure.UKさんの「フューチャー・イヴ」のその後をイメージして制作しました。
前回の作品でビスマス結晶を背景にモチーフとしていた事もあり、今回もせっかくなら出したいなと。ミクちゃんが宇宙を漂い、年月がたって髪が所々結晶化していったら綺麗だろうなと思いながら描きました。
―イラスト制作にあたって苦労した点はありますか。
時間が、欲しいです(笑)。私が倍速になるしかないですね。
―アルバムを手に取ってくださる方々に見てほしい見どころはありますか。
今回タイトルロゴも描かせて頂きました!立体感を出してデザインしていたものを更にQ.Iさんにかっこよく配置していただいたので、是非全体を見て楽しんでいただければと思います!
―ブックレットを見ると、これまでたくさんのsasakure.UKの作品に関わってきたことがわかります。
sasakure.UKとの制作についてどういった感想をお持ちでしょうか。
sasakure.UKさんの作品にはレプリカから携わらせて頂いてるのですが、私もSF好きなので制作しやすいなといつも思っています。
化孵化とフューチャー・イヴは特にそれが出たのではないでしょうか。化孵化はおどろおどろしい悪夢のように、フューチャー・イヴはアンドロイドのポップで儚い夢のように異なった未来を表現する事ができて楽しかったです。
ディカダンスでは壊れたフィギアが混ざり合って動き出したらいいなと思いながら描いていました。
―sasakure.UKの作品をはじめ、革蝉さんのファンの方々にメッセージをお願いします。
いろいろ裏で頑張ってるので楽しみにしていてください〜!
これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!
Design Q.i
―前回アルバム「エルゴスム」もデザインを担当されていましたが、今回はどういった心境でデザインに当たられましたか。
今回はデザインする箇所が多かったので時間はかかったのですが、自由にとても楽しくデザインさせて頂きました。
曲を聴いた時のワクワクの気持ちがそのまま純度100%でデザインにも反映されていると思います!
―デザインの見どころを教えてください。
ミクちゃんと一緒にいろんな星への小旅行をデザインと共に楽しんでもらえたら嬉しいです!
ささくれさんの歌詞の特徴としてルビがたくさんあるので、その辺を是非ブックレットとともに楽しんでください。
―本アルバムを聴かれていかがでしたか。
どの曲を聴いても、心象風景が見えてきてデザインのアイデアがどんどん出てきました。ささくれワールドにずっとずっと浸っていたい…そんな気持ちにさせてもらえるアルバムでした。これからも素敵な曲を楽しみにしてます!
Mastering 青木 悠(B-PILOT)
―アルバム発売に際して、一言お願いいたします!
ささくれさん、アルバムリリースおめでとうございます!
M1,M3のミックスとマスタリングで参加させていただきました。
バンドのアンサンブルとささくれさん節が両立されていて、めっちゃカッコいい楽曲になってます!
ボカロってミックスするの難しいですね、、笑
ささくれさんにしかない、世界観とメロディがつまったアルバム、是非何度も聴いて楽しんで下さい!!
「ポジネガ*ミステイカーズ」MV toga
―今回のアルバムの先行頒布に際して、ミュージックビデオ「ポジネガ*ミステイカーズ」が公開されました。こちらはどういった経緯で制作されたのでしょうか。
実は結構前にお話は頂いていて、当初は「ネガポジ*コンティニューズ」のMVの予定だったのですが、別ルートの曲も良いかもしれない!という流れで今作「ポジネガ*ミステイカーズ」になった…と記憶してます。
「ネガポジ*コンティニューズ」もゲーム(セガさんの初音ミク -Project DIVA-)でよくプレイさせていただいていた曲だったのでワクワクでした。
―制作中はどのようなやりとりがあったのでしょうか。
良い案が浮かばない場合はささくれさんにご相談させていただいているのですが、締切直前、作業時間が重なった時はリアルタイムで制作チャット大会になってました(笑)
―MVの見どころはどこでしょうか。
小ネタは勿論なのですが、ポジミクパートとネガ子パートの違いや、ポジミクの変化等も楽しんでいただければ嬉しいです!(※ポジミク・ネガ子…曲中登場人物の呼名)
―制作中苦労した、大変だったことは何でしょうか。
「ネガポジ*コンティニューズ」との関連性が切れないように常に意識してました。
また、テンポが速く、次々シーンが変わっていくので動画素材量が大変な事になりました。ゲーム作れそうです(笑)
―過去のsasakure.UKの楽曲のモチーフがたくさん登場しますが、こちらはtogaさんのアイディアでしょうか。過去の作品は本作のために勉強されたのでしょうか。
他のMVも観ていただけると察していただけると思うのですが、小ネタを仕込むのが好きな性分なので隙あらば勝手に入れさせていただいてます!
今回「ネガポジ*コンティニューズ」をゲームで再プレイしたり、「ニジイロ*アドベンチュア」「ネガポジ*コンティニューズ」「ポジネガ*ミステイカーズ」の歌詞を印刷して違いを見つけてはメモしてました。
―MVを見てくださる方々にメッセージをお願いします。
MV観てくださった皆様本当にどうもありがとうございます!一時停止して細部まで気付いてくださる方もいて感想を拝見しては喜んでおります!
そしてこれから初めて聴くという皆様方も楽曲と共にMVも楽しんでいただけると幸いです!
―ありがとうございました!
アルバム『未来イヴ』はAmazonやBOOTHの通販で、
AppleMusic/Spotfyなどデジタル配信でそれぞれリリース中です。
sasakure.UKが生み出す未来の世界に、是非触れてみてください!
sasakure.UK
New Vocaloid Album
『未来イヴ』
2023 7/8 Release!
©︎ササクレイション
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